鉛山七境詩の大体の意味

銀砂歩
瀬戸鉛山村に銀砂歩(白良浜)あり、東北の上に七鉱山の峰あり、その下を望むと白砂ばかりである。
鉛山下一帯はとけるような細かい白砂で雪のようだ。
銀砂(白良浜)を一望すると更に海の潮で洗われて更に白い。
秋の霜長く消えず、夏雪 亦 尺に畳(つも)る。
(「砂が白くて、多くある」という大体の意味)
眠る鴎(カモメ)を見ずして、ただ浜辺に残る鴎の足跡を見るのみ。
(浜辺にいるカモメは見ないが、浜辺に残るカモメの足跡を見る)

金液泉
鉛山に温泉多くあり、その湯の内で碕の湯は最も清潔で健康によい。
天地に大きな穴あり、碕の湯は金の宝で、万物の根源の力を与える。
昔から石が曲がり、激しい水音がなり、清潔である。
私の病気の源を治す、更に仕事の疲れを癒す。

芝雲岩
鉛山の西南の磯にあり、形は芝で、雲に似ている。
磯の端の石、誰が見ても似ている。
芝雲のような形をして、五色の色を散りばめている。
この形や色は昔の神人が石を練って補修したものではない。
(自然が造形したのだという意味)

龍口巖
芝雲の西にあり、形は龍の首、口は西に開き、下は凹になって雨が降りこまない。
昔、飲龍の川と云うのを聞いたが、今、龍口の形をした岩を見る。
首を挙げ、青い海を飲み、名月に吼えている。
海雲の間にあって、鯨を見逃すまいと。

行宮跡
崎の湯の上にあり、白河帝がここに暫く居た所で、碕の湯に入浴した。
温泉の土(湯崎)に白河帝の行幸の跡がある。
敷石、石畳に苔が生え、むなしく残っていて、松風のみが聞こえる。
天子の旗が煌びやかに去来していたことを声にして残す望む。

平草原
鉛山の東南の山の口、空広く平野である。草は柔らかく天に届きそうだ。
図らずも石崖の上にあり、平原である。
春の草の名前は知らないが、終花した草は多く茂っている。
日暮れに しとしとと降る雨の中を蓑傘をかぶった牛飼いの男が見える。

薬王林
浜の湯の上にあり、樹木鬱蒼と茂っている。
燈道、石段を巡らし、樹木は青々と茂っている。
樹木の中を散策するのはよい。
春雨の降る4月や五月には、ホトトギスも一声鳴く。

参考文献

 講読郷土詩 白浜編 千葉宏太郎編 平成14年11月吉日
 白浜温泉史 昭和36年4月5日発行
 南紀雑筆 椿の葉巻 著者雑賀貞次郎 昭和13年5月19日