杉尾神社と安宅川(日置川)の橘�ｮ藤　(参考文献皇室と紀伊 毛利紫庵著)

　杉尾神社　名草郡直川荘府中、南村の西にあり。

　相伝う、安宅権頭という人、阿波よりこの村に来て住む。

　聖武天皇駐輦の時、権ノ頭の女杉姫を召して寵す、後姫死す、

　当社(杉尾神社)この姫を祀ると。

　姫、本国を慕いしかば社を西向けにすると。

　村内に安宅屋敷という地あり。

　注、聖武天皇(728-756)　注、杉尾神社、巽村坂井(現海南市坂井)

　安宅川(日置川)の橘�ｮ藤

　安宅川に安宅氏あり熊野の著姓として知らる(正平文書)。

　南北朝の間、橘橘�ｮ藤あり観応元年(1350)(崇光帝)足利尊氏の命により淡路の海賊を防ぎ功あり。同国由良に居城す。

　�ｮ藤、子あり安宅玉杉丸といふ。

　文和元年(1352)(後村上帝朝)淡路萱島の地頭となる。其後、�ｮ藤足利に背き、正平１４年(1359)（後村上帝朝)南朝より備後守に任ぜらる。

　同年八月綸旨を賜り、周参見氏と共に阿波国を討つ。

　同十七年(1362)阿波の内、南方の地を賜る云云

　�ｮ藤の裔、淡路の由良、たき口、洲本に居城す。

　三好長慶の弟、摂津守冬康は、安宅を一族とす。

　冬康の孫を河内守猶重といふ。

　天正九年(1581)織田氏に降り、熊野知原に退却し、安宅に死す。

　猶重の子、玄蕃充重俊、早く死す。

　其伯父左近亟春定、家を継ぎ、安宅川四十余郷を領す。

　天正十三年(1585)豊太閣当国征伐の時降伏して千八百石を領す。

　石田三成滅亡の後ち浪人して安宅に死す。

　春定弟信定、朝鮮役に功あり。

　其弟重春大阪役に秀頼に属す。

　大阪落城の後ち、勢州鳥羽に匿れ、浅野氏に捕らえられ遁れて日置　　　川正光寺に自殺す。｛元和元年(1615)｝

　　　其子左近介、当村に帰住し代々地士を命ぜらる。

　享禄三年（1530）十一月　　　　熊野水軍史料　安宅一乱記　頁42〜47参照

　　安宅阿波守殿

　　抑此安宅之家ハ、清和源氏小笠原家に紛無之処ニ、御綸旨ニ橘と顕

　セし事ハ、先年、先祖備後守之時之御綸旨ニ、正平 （1346〜1369）之

　時、橘之頼藤と被遊候、其例ニ依而此度之御綸旨ニも橘と顕す也、

　　此度勤功之輩え阿波守安定○知行割任先例左之通、

　＜略＞