名字のいわれ

 昔、朝来の峠に市守長者と言う豪族があって、神武天皇がこの地をお通りになると言うことを聞いて、長者は三人の子に失礼のないようにお迎えせえ、と、言い渡したと言う。

 それで三人の子ら、いろいろ考て、上の子はエノキの木の下に稲を千束積上げて差上げ、中の子は、初物ばかりを集めて差上げ、下の子はススキと言う魚を差上げたと言う。

 天皇さんは大喜びで、お礼にというて初物を差上げた子には「宇井」、ススキを差上げた子には「鈴木」、稲束を差上げた子に米本(榎本)の姓を名乗れと言われて、それから宇井、鈴木、米本(榎本)の姓がはじまったと言う。

 峠には今も市守長者の屋敷跡が残ってあると言う。

 注、方言 など原文の意味を損なわないように修正した。

 参考文献 民間説話・伝説 頁766